「でも、もしかしたら、それが犯人の狙いだったのかもしれません」
「どういう意味?」
晴翔が、報告書が入っていた茶封筒を取り出した。
中から一枚のメッセージカードが出てきた。
『花は咲きましたか?』
理玖は目を疑った。
報告書の表紙と同じ毛筆体でプリントされた文字だ。まるで今の理玖と晴翔を予言した言葉に見えた。
「さっき、封筒の中を確認している時に見つけました。偶然にしてはあまりにタイミングが良すぎて、背筋が寒くなります」
手が震えて、言葉が出ない。
息の吸い方がわからなくなって、呼吸が上手くできない。
(花なんて、これじゃまるで、僕と晴翔君がWOだって知っているみたいな。こんなの……、僕と晴翔君がspouseになるのを望んでいるような)
震える理玖の手を晴翔が握って、後ろから抱きしめた。
「理玖さんに負荷をかけてフェロモンを放出させて、otherの俺に襲わせようとしたんだと、最初は考えました。だけど、それだけじゃないかもしれない。犯人は俺たちをspouseにするのが目的だったのかもしれません」
弁当盗難の時も、理玖は晴翔のフェロモンに煽られて大量のフェロモンを放出して、自分が飲まれて倒れた。
今回も同じような負荷を掛ければ、今度こそ晴翔が理玖を襲うと思ったのだろうか。
襲われたとして、spouseになるとは限らないのに。
「そんな、僕の気持ちも晴翔君の気持ちも、知っている人なんかいないはずなのに」
理玖と晴翔自身ですら、互いの気持ちを知らなかったのに。二人の気持ちを知ってる人物なんか、いるんだろうか。
「それを確かめるための、弁当の窃盗だったのかなって、考えまし